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サイエンスの未来を見つめ社会との関わりを考える
「科学コミュニケーション」

東京大学大学院理学系研究科准教授の横山広美先生は、研究者としてだけでなく、サイエンスライターとして、そして大学院理学系研究科・理学部の広報として幅広くご活躍されています。そのすべての活動に共通しているキーワードが「科学コミュニケーション」です。科学コミュニケーションという言葉を聞くと、科学の楽しさをわかりやすく伝えるといったことを想像しがちですが、横山先生がもっと重要だと考えているのは、研究者がサイエンスの未来や社会的な意義を考え、それを社会に訴えてゆくことです。

執筆/須貝 弦

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横山 広美(よこやま・ひろみ)

東京大学大学院 理学系研究科 准教授

1975年生まれ、東京都出身。1999年からの5年間、ニュートリノ振動を検出する国際共同実験「K2K」のメンバーとして参加、つくばの「高エネルギー加速器研究機構」に常駐。同時に、サイエンスライターとして活躍。2007年より現職。

2004年 東京理科大学 博士(理学)
2004年 東京工業大学大学院 理工学研究科 特別研究員
2005年 総合研究大学院大学 葉山高等研究センター 上級研究員
2007年 東京大学大学院 理学系研究科 准教授

科学コミュニケーションは「目的」ではなく「手段」

横山広美先生には、いくつかの顔があります。ひとつは、サイエンスライターとしての顔。ニコンのWebサイトでは光をテーマにした連載記事『光と人の物語 ~見るということ~』の執筆を担当され、日本科学技術ジャーナリスト会議の「科学ジャーナリスト賞2007」を受賞。また、雑誌『科学』(岩波書店)や『子供の科学』(誠文堂新光社)等でも活躍されてきました。

一方、2007年からは、東京大学大学院理学系研究科准教授として、理系研究者の立場から科学コミュニケーションに関する研究・教育を行っています。また、大学院理学系研究科・理学部の広報として、研究内容に関する広報活動、例えば講演会の開催や、記者会見の運営などもされています。

また、大学の内外で「理系女子」を応援する活動*もしている横山先生。理系の大学に進学したいと考えている女子高校生に対してさまざまな情報を発信するだけでなく、企業の採用活動ともコラボレーションして、女性が理系に進むことに対する抵抗感をなくしていこうとされています。

*科学技術振興財団「女子中高生の理系進路選択支援事業」
東京大学採択プロジェクト「家族でナットク!理系最前線 ~見えないものを見てみよう!あなたも未来の女性研究者に~」の代表をしています。

そんな横山先生が、そもそもサイエンスに興味を持ったきっかけについて、お話を伺いました。

「幼稚園から高校まで、ずっとカトリック系の学校に通っていました。小学生の頃は『ナルニア王国物語』や『コロボックル物語』シリーズが好きで、児童文学の作家になれたらいいな……と思っていました。しかし、中学生の頃から、私はどうして存在するのか、神様はどこから来たのかといった疑問を抱くようになったのです。でも、誰に話を聞いたらいいのかわかりませんでした。学校のシスターに聞くのも違うだろうし、と(笑)。」

そんなとき、ある出会いがありました。

「友達のお母さんが、私に科学雑誌『ニュートン』を薦めてくださったんです。どうして薦めてくださったのかは、いつか聞かなくてはと思っているのですが。そして、中学2年のときにニュートンで、初期宇宙、ビッグバンについて知りました。このときは、すごくびっくりしました。このようなことに、宗教や哲学ではなく物理学で食い込むことができることに衝撃を受けたのです。書くことが好きなので、そこで知ったことをどんどんノートにまとめました。宇宙について最先端のサイエンス、(学問的な裏付けのある)地盤が固い知識を知って、自分の知識が急激に広がり、自分の存在の足場というか、解が見えてきた気がしました。」

横山先生が中学生時代に書き留めていたノートには、科学雑誌から得た知識がびっしりと書き込まれている

そうしてサイエンスの世界に憧れるようになり、高校2年生のときにはすでに「素粒子、ニュートリノの研究がしたい」と思うようになっていた横山先生。6歳の頃から高校生まで絵画を習っていて表現する意欲が高かったこともあり、「科学の書き物で働けたら幸せ」と思うようになります。そのためには「現場に行くべき。知ってから、書く人になるべきだ」と考えた横山先生は、理系への進学を志します。

しかし「理系に進みたい」と言い出した横山先生に、周囲の大人は猛反対でした。「医薬系なら将来が見えるけど、好きな学問をしてその先どうなるのだ、というのが周りの大人の心配でした。しかもどちらかというと文系科目の方が得意だったのです。でも、あきらめきれなかったのですね」と横山先生は話します。結局大学院まで進み、研究にどっぷりと浸かり、その後はサイエンスライターとして活躍されることになる横山先生。現在の理系女子を応援する活動には、このような経験も関係しているのでした。

さて、冒頭に挙げたように、横山先生は幅広い活動をなされていますが、すべてに共通するテーマは、やはり「科学コミュニケーション」です。横山先生の考える科学コミュニケーションとは、どういったものでしょうか。

「市民に対してわかりやすく伝えることや、どうやって楽しんでもらえるか……という取り組みは、この数年で飛躍的に進みました。一方で私がこれから大事だと感じるのは、日本の科学がどう進んでいくべきか、その根幹を研究者自身が考え、議論し、そして社会との関わりについても考えていくことです。研究者はサイエンスの価値を社会に伝えることで、こうした問題を皆さんとも共に考えてゆけるようになります。」

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