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科学コミュニケーションの視点から
科学者としての自分を考える

大学院では科学コミュニケーションに関する講義を受け持っている横山先生。研究者を目指す者が科学コミュニケーションについて学ぶ意義について、次のように話します。

「将来必ず出会う課題を議論する。それを、いっしょに考えていくということですね。学生の期間は研究そのものにのめりこんで研究の基礎を身につけることが必要です。しかしその時期から、専門知をもつ者として自分の将来を考えると同時に社会の将来を自分で考えられる存在になる必要があります。そして、何かを表現したいというときに、必ずしも自分だけでできなくとも、デザイナーやライター、映像作家と共に仕事をするセンスも持ち合わせることが必要です。」

学生による活動もさかんです。学生と共に「0to1(zero to one)」というプロジェクトを立ち上げ、科学コミュニケーションに取り組んでいます。例えば、学生が自分の研究の魅力について、他の院生や高校生に伝えるというイベントも開催されています。

0to1:東京大学大学院理学系研究科有志科学コミュニケーション活動グループWebサイト

「お互いの研究を紹介しようとすると、ついつい相手が理解しているつもりで話をしてしまうことに気づきます。高校生に説明するときも、事前に練習会を行い、他のメンバーがわからない点は説明を追加します。また、説明のうまいメンバーのやり方を学んで、自分の説明に取り入れることもあります。このように、お互いに学ぶ機会が大事です。学生は、自分の取り組んでいることを人に伝えるためにまとめる機会があると、格段に伸びるんです。」

人に何かを伝えるということは、自分の考えを見つめ直すことにもなります。また、人に何かを一生懸命伝えようとすることで、自分自身の考えがより明確になる、新たな発見があるということもあるでしょう。決して、誰かを言いくるめるためにコミュニケーションをしているわけではないのです。横山先生は「プロは、やっぱりプロ」と話します。見せる意識は大事です。しかし表現する上でのテクニックやビジュアル面は、最終的にはプロに任せることが可能です。表現の重要性を理解した上で、表現のプロと力を合わせながら、研究者は専門知をもった研究のプロとしてコミュニケーションを実現すれば良いわけです。

科学についてさまざまな人が語り合うイベント「サイエンスアゴラ2008」に参加した0to1のメンバーたち

横山先生の視点からは、研究室に閉じこもって実験や理論に没頭するだけでなく、社会の目指す姿を自ら描き、その中での自分の研究の価値を周囲にも伝えて、共感を得ながら実現させてゆく、という科学者の姿が見えてきます。自分の専門分野に誇りと責任を持ち、それを社会にアピールしながら未来を切り開く専門家を育てること。これは、あらゆる学問分野が共通に目指すべき人材育成ではないでしょうか。

横山先生のチャレンジは、科学研究を目指す若者に、社会に開かれた自我の確立を促す人間教育といえます。確信を持って語る横山先生のお話をうかがっていると、先生に身をもって科学の価値を示した偉大な研究者たちも、彼女の後ろから微笑んでいるように感じました。

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