Adobe Japan Education Vanguards (高等教育機関教員向けコミュニティ)

アドビとして2回目のMAXとなった「Adobe MAX Japan 2009」。今回は、大学でデザインやメディアに関する研究・教育に携わる3名の先生方にお集まり頂き、MAXについての感想やご意見を伺うラウンドテーブルを行ないました。その模様をレポートいたします。

ラウンドテーブルに参加された先生方
両角 清隆 先生
東北工業大学 ライフデザイン学部 クリエイティブデザイン学科 / 大学院工学研究科デザイン工学専攻 教授
中川 浩一先生
倉敷芸術科学大学 芸術学部 メディア映像学科 アニメーションコース准教授
久松 慎一先生
東京大学 大学院 情報学環 助教
司会:山崎 真湖人
(アドビ システムズ株式会社 ユーザーエクスペリエンス スペシャリスト)
MAXに参加した目的

先生方が今回のMAXに参加した目的は、何だったのでしょうか。「インタラクションデザインを教えていますが、学生はソフトウェアやサービスについて絵を描くことができても、実装まではなかなかできない。理想はよくても動かないと意味がありません。デザインの学生とはいえ、せめてフロントエンドの側から責任が持てるようにしたい。そこでAdobe Flex®やAdobe AIR®というものが使えるのではないかと思い、その情報を入手するために参加しました。」(両角先生)

「本当は学生を連れてきたかったんです。中国地方で映像を扱っている大学って我々しかない。オンリーワンゆえに、情報が隔絶しているところがあるんです。学生をこういうところに連れてきて、自分たちだけの狭い世界でこじんまりとおさまらずにもっと広い世界を知ってもらいたい。もっとも、内容が高度なため学生たちが聞いても理解不能かもしれません。ここでいろいろ勉強させていただいたものを、学生たちにわかるかたちで伝えていきたいと思っています。」(中川先生)

「Adobe Flexに興味を持っていたのですが、今までは手を伸ばしていませんでした。今回のMAXではFlexに関する最新情報を集める目的で参加しました。Flexが自分の研究にとって習得する価値があるのか、判断したかったという面もあります。」(久松先生)

基調講演について

まず、初日の基調講演について感想を伺いました。久松先生は次のように話します。

「アドビの大きなビジョンが語られていて、こういったイベントの基調講演って、こういう内容だよなぁと思って聞いてました(笑)。でも、さすがプレゼンは上手ですね。基調講演の内容が、その後の各セッションでかなり具体的になったので、そのきっかけになりました。」

中川先生は、現役アニメーターとしての目線も含めて、次のように話します。

「僕らにとってはいかにしてデバイスを越えるかっていうのが、大きな問題なんです。例えばアニメーション作って、どこで見られるか。テレビです、映画です……で終わっちゃう。そうじゃないところで自分たちの表現、アートの間口を広げられへんかな~とずっと思っています。基調講演で見た未来像は、いかに簡単にデバイスを越えるかということ。僕らからすると、表現のステージがものすごく増えたと思います。」

両角先生は「アドビの技術が理解できた」と話します。

「つながって色々なことができる技術はすばらしいと思いました。新聞のデジタルコンテンツの例がありましたが、すばらしいことだと思いつつ、これでは紙の新聞は売れないだろうなぁ、読む人がお金を払うという今の新聞とは異なる世界になっていくのだなぁといったことを感じていました。」

2日目の基調講演については、中川先生が「Flash Catalystがすごく面白かった」と話してくださいました。デザイナーと開発者の仕事をよりスムーズにつなぐインタラクションデザインのツール、Flash Catalystに、クリエイティブワークフローの近未来像を感じられているようでした。

「デベロッパーとかクリエイターとか関係ない。デベロッパーもデザインするでしょ。そして今までは分業化されていたものが、ひとつながりになっていきます。写植がDTPになってデザイナーの責任範囲が広がったときと同じようなことがWebでも起きている。でも学生は職人志向が強いんです。他の領域に足を踏み入れるのがこわいのかも知れません。しかし、表現技術は幅広く磨かなければ勝負できませんし、ワークフローの前後を知ることは、クリエイターとしての立ち位置を見直す上でとても重要です。」

面白かったセッションは?

それでは、実際に皆さんが参加されたセッションの中から、面白かったものをピックアップしていただきましょう。両角先生は『D2:AIRコン優勝者セッション:AIR×イマジネーション=Grand Prix!!』を挙げます。

「Hito Fude AIRというAIRアプリケーションについて、開発の背景を紹介する講演でした。機能を絞り込んで、あえてユーザーがやれることに制約を与えることで、逆にユーザーの表現力を引き出せている作品でした。アイディアを論理的に構造化し、技術に変換する訓練は、授業でもやってみたいです。」

D2:AIRコン優勝者セッション:AIR×イマジネーション=Grand Prix!!

AIRコンテスト2008でGrand Prixを受賞した丸山真実氏のセッション。受賞作品の「HitoFude AIR」は、一筆書きをリレー方式で繋げていくアプリケーションで、インタフェースをFlash® CS3、ロジックをFlex Builder3、サーバーサイドとの通信にBlazeDSを使って開発されました。
スピーカー:大日本印刷株式会社 丸山真実

両角先生はさらに、『C8:ワークフローとプロトタイピング』を挙げました。

「日々苦労してプロセスを固めていった話で、説得力がありました。大規模サイトの話が中心でしたが、小規模のサイトであればどうすれば良いのか、手戻りしやすい方法も提示していて参考になりましたし、この業界のワークフローというのは、だいたい答えが出てきたんだ、という現状が分かりました。また、Contribute®という製品についてより詳しく知ることができたのも良かったです。コンテンツマネージメントに有効だと感じました。例えば地域コミュニティのコンテンツを作る際にも、作りやすい仕組みにすること、使いやすいフォーマットを用意してあげることが大事なんです。ビジネスの世界では当たり前かもしれませんが、地域社会のためのコンテンツを制作しなくてはいけない立場の人には、まだまだ知られていないと思います。このContributeのようなものは、もっと広めていかなければいけませんね。」

C-8:ワークフローとプロトタイピング

大規模なWebサイト制作の現場において実際に運用されているワークフローと、その中でDreamweaver®とContributeをプロトタイピングツールとして効果的に活用した例を紹介しました。
スピーカー:株式会社ビジネス・アーキテクツ 伊原 力也

中川先生は『A1:インタラクティブ・コミュニケーション事例』を挙げました。

「「imaginative」のお2人による事例紹介でした。中でも“ヴィダルサスーン”の事例が面白かったです。ボツ案も含めて、発想のプロセスを紹介していただいた。ある制約のもとでいかに効果を最大化できるかが、クリエイターのいちばんの腕の見せ所です。そこに至るまでの発想がすごく大事。発想のトレーニング方法は体系化されているわけではありませんが、せめて何らかのかたちで学生に教えることができればと思います。」

A-1:インタラクティブ・コミュニケーション事例

imaginative inc.でのWebプロモーションなどのプロジェクトの企画から実装にいたるまでの過程や、どのような判断や根拠でプロジェクトを進めていくのかをこれまでの事例等を交えながら紹介しました。
スピーカー:深澤洋介・水藤祐之

久松先生は『G1:RTMFPを使った未来のコミュニケーション』を挙げます。「P2Pの使い方というとチャットがすぐに思い浮かびますが、それ以外にも面白いことができると思っています。例えば、以前に場の雰囲気を共有するために環境音だけ交換するというアイディアを考えていたのですが、RTMFPを使えば実装できそうです。」

G1:RTMFPを使った未来のコミュニケーション

Flash® Player、AIR、 Flash Media Serverの新しいネットワークプロトコル「RTMFP」をテーマとしたセッション。ピアツーピア通信をはじめ、RTMFPがいかにリアルタイムのオーディオ/ビデオコミュニケーションの品質改善につながるかを解説しました。アドビ システムズ 株式会社 太田 禎一

さらに『E2:Flash Player 10の新テキスト エンジン"TextLayout Framework" フル活用Tips』については「今回のMAXでいちばん印象的でした。今までWebだからという理由であきらめていた、きれいに文字を使った表現ができるかもしれません。例えば、タグクラウドをきれいに見せるために動きをつけることを考えると、Flashで作るのはペイできず、あきらめてHTMLで表現していたりしました。まだ開発途中のものですが、このテキストエンジンには“できるかも系”として期待しています。また、Webでの出版というものが、やっと現実的に実現されてくるのかなと。そのためだけにFlashを使う価値もあるでしょう」と言います。

E-2:Flash Player 10の新テキストエンジン“Text Layout Framework”フル活用Tips

Flash Player 10の新しいテキストエンジンである「Text Component Library」について解説したセッション。さまざまなタイポグラフィ機能をXMLマークアップフォーマットによって動的にコントロールする方法などを紹介しました。
スピーカー:Nat McCully

その他に面白かったものとして、久松先生は、ActionScript®の高度な活用技術が紹介された『D6:Flashと外部デバイスを使ってアレを作りました』『D8:コミッタ全員集合!? Spark projectライトニング トークセッション』の2つを挙げました。その理由を「今までC++やJavaでやってきたことが、ActionScriptでできるということがわかりました。開発したものをより多くのユーザーに見てもらうことを考えても、Flashのプラットフォームは魅力的です。開発についての情報源も知ることができました 」と話します。

『D6:Flashと外部デバイスを使ってアレを作りました』は、中川先生も聴講されています。

「メディアアートは敷居が高いと思われています。出力デバイスのこと等々、みんな興味はありますが、もう一回勉強しなおすとなると、結構きついんです。それが、使い慣れてるFlash、AS3、そして外部のデバイスを繋ぐFunnelが媒介することで、メディアアートにもアプローチしやすくなったと思います。Flashがアニメーターを生んだように、メディアアーティストをたくさん生み出すことになるのではないでしょうか。」

D-6:Flashと外部デバイスを使ってアレを作りました。

アドビ公認のユーザグループ「Flash OOP」のメンバーが、Gainerや外部ライブラリなどを使い、Flashと連動した外部デバイスのサンプルを紹介しました。Webを飛び出した新しいFlashの新しい使い方に、多くの注目が集まりました。
スピーカー:Flash OOP

D-8:コミッタ全員集合!?Spark projectライトニングトークセッション

日本最大規模の Flash、ActionScript オープンソースコミュニティ「Spark project」のコミッタによるライトニングトークセッション。使える/役立つ/新しいアイディア満載のプロジェクトを紹介しました。
スピーカー:Spark Project

学生にもライブでMAXを体感してほしい!

最後にMAX全体を通しての収穫や、「もっとココが聞きたかった」「MAXにこんなことを期待したい」といった点について、ざっくばらんにお伺いしました。

両角先生は、Flexに関するセッションを中心に聴講されていましたが、それについて次のように話します。

「良いシミュレーションツールが欲しいと考えているんです。Flashもいいのですが、私にはなぜか使いにくい。Director®に比べて、枠組みがしっかり示されていないせいかも知れません。現在はFlexに期待しています。シミュレーション開発について、もっと情報提供してもらえれば助かります。しかし今回のMAXを通じて、自分自身が何を学べば良いかがわかってきたとは思います。また、ユーザーグループ等の存在を知り、協業できる相手を探せそうだとも感じました。このあたりは、大きな収穫と言えますね。」

中川先生は「やはり学生を連れてきたい」と話し、両角先生と久松先生も大きくうなずきます。

「学生をMAXに連れてきたら、クリエイティブ業界で何が起きているのかが見え、将来のチョイスが広がるはずです。こんな表現、こんなクリエイティブワークがあるんや……と。地方ではなかなかうかがい知れない、本当の仕事の最前線ってどんな動きをしてるのか、リアルタイムの今がわかるイベントでした。学生向けのセッションはいらないと思います。学生が見たら理解できなくて、頭を殴られるくらいの感じでいいと思うんです。全然理解できなくても、皮膚感覚としては伝わるはずです。でも学生向けの料金設定はほしいですね。地方は、交通費なども余計にかかるので、なるべく参加しやすくしてほしいです。」(中川先生)

今回のMAXにおいて、教育やご自身の研究に役立つ数多くの情報を得られたとおっしゃる、3名の先生方。セッションの内容には大変ご満足いただけた様子でした。今回のMAXに参加することができなかった教育関係者の皆様も、次回MAXへの参加をぜひご検討ください。

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