Adobe Japan Education Vanguards (高等教育機関教員向けコミュニティ)

2013年5月4日~8日にアメリカ・ロサンゼルスで開催された「Adobe MAX 2013」。世界中から5,000人以上のクリエイターたちが集い、様々なセッションを通じて、同社の先進的ツールが世界にもたらすインパクトと未来のICT像を共有した。

これまでのWebディベロッパー向けイベントから、「クリエイティビティ」をテーマとする、より幅広いカンファレンスへと変身を遂げた今年の「MAX」。ここで公開された新しい技術・ビジョンが、幅広いクリエイティブ分野の近未来に大きな影響を与えることは間違いない。現地で「MAX」に参加された永來真一(学校法人・専門学校HAL東京 統轄責任者)・小山内靖美(日本電子専門学校 Webデザイン科 科長)両氏に、現地の様子と、そこから教育について得られたヒントについてうかがった。

Adobe MAX 2013

現地インタビュー:現場の熱気と興奮のなかで

▼ クリエイティブとICT教育の関連性

米アドビシステムズ社が開催する「Adobe MAX」は、同社にとってはもちろん、ソフトウェア業界全体にとっても世界最大規模のカンファレンスに位置付けられる重要なイベントだ。2011年秋からおよそ1年半ぶりとなった「Adobe MAX 2013」は、2013年5月4日~8日、ロサンゼルスコンベンションセンターおよびノキアシアターで開催された。世界中から集まった、デザイナー・デベロッパー・ビジネス戦略家などの参加者は約5,000人。基調講演や300を超えるセッションを通じ、同社の提供する先端の技術やツール、ビジョンに触れた。

今回の「MAX」で特筆すべきポイントは、これまで主にWeb周辺の技術を主なトピックとしてきた本カンファレンスがクリエイティブ方向へ大きく舵を切り、デザイン・動画・写真をはじめ、あらゆるクリエイティブをバックボーンとする幅広いカンファレンスへと進化したことだ。それはクリエイティブな人材育成に取り組む学校・教育機関にとっても、いち早く将来の方向性を探りヒントを得る機会が誕生したことを意味する。

現在技術革新が続くクリエイティブ分野の産業では、各分野の領域が流動的なものになり、幅広い領域の横断からいかにイノベーティブな創造力を発揮するかが重要になっている。また広くIT・ビジネス分野全般においても、市場の流動性と製品開発に求められるスピードが加速するなかで、よりクリエイティブな人材へのニーズが高まり続けている。「Adobe MAX 2013」の会場に、このような動きに対応するより良いICT教育と戦略へのヒントはあっただろうか。ロサンゼルスで会場入りし、現場の空気に触れている最中の永來真一・小山内靖美両氏に、アドビ システムズ マーケティング本部 教育市場部 部長 増渕賢一郎が日本から電話インタビューを行った。

── 現地の雰囲気はどうか、楽しんでいらっしゃるか。第1日の基調講演「A Creative Evolution」では、これまでSuite製品として提供されてきたアドビのツールがCreative Cloudに全面移行するというセンセーショナルな発表もあった。印象に残ったセッション、あるいは期待できると感じた製品・ソリューションはどのようなものだったか。

小山内:現地でしかわからない情報にいち早く触れられる毎日に、わくわくし続けている。自分のクラスの学生とは、毎日MLなどで自分の体験を共有している。学生からも元気な反応が返ってきており、目の前で起こっていることの興奮を直に伝えられることがうれしい。

私はWeb学科の担当なので、興味としてはやはりレスポンシブやパララックス、HTML5といったWeb技術に注目した。またAdobe Edgeの全体像、次バージョンへの期待もあった。これらについては期待通り、興味深いテクニカルカンファレンスに多数出席できて満足している。自分が考える、今後のWeb技術の方向性と一致していることも確認できた。

また今後、Creative Cloudに移行するアドビのビジョンについても期待が高まった。本校ではサービスデザインの授業にチーム制を取り入れ、より現場に近い形での協働を経験させている。ファイルの共有やバージョン管理にも現場で使われているのと同じサービス・ツールを用いているのだが、これまでは個別のサービスを使い分けなければならなかった。Creative Cloudはそれを統合してくれるという点で、まさしくソリューションだと感じている。教育現場に導入すれば利便性も高まり、制作効率も学習効率も向上するだろう。教員の「学びの環境を整える」という仕事をサポートしてくれるものになると期待している。

Adobe MAX 2013 基調講演1日目 Adobe MAX 2013 基調講演1日目

第1日の基調講演では、2003年スタートしたクリエイティブ製品群Creative Suiteが、今後はCreative Cloudに統合されることが発表された

永來:私は経営・マーケティングなど学校の運営に関わる業務を担当しており、クリエイティブやデザインからは遠い位置にいる。そのため実は、具体的な製品情報には疎い。しかし実際に参加してみて、非常にいい機会をいただいたと感じている。アドビの戦略自体はある程度想像通りだったが、その練り上げられ方の精度は勉強になった。また各セッションとも、プレゼンテーションスキルの高さと壮大な演出に圧倒された。各スピーカーは、その瞬間にすべてを賭けるぐらいの意気込みで、相当周到に準備したのだろう。「伝えること・見せること」の大切さをよく理解している。こういったプレゼンテーションは特に日本人が下手な部分だが、これから世界で活躍する人材を育てるうえで、避けては通れない大きな関門になるだろうと感じた。

セッション全体の構成や進行も参加者の視点が考慮され、綿密に練られた素晴らしいイベントで、これを体験するだけでも参加した価値があった。例えば学生募集のイベントなど、自分が現在手がけている仕事の様々な場面に直接生かせる要素もあり、インスピレーションがわいた。

── 第2日の基調講演「Community Inspires Creativity」では、4人のクリエイターが登壇して、自らのクリエイティビティの源泉やブレイクスルーの経験について語った。これは、第一線で活躍するクリエイターの声を届けることで、ユーザーのインスピレーションを手助けしようとする新プロジェクト「Creative Voice」の第一弾に位置付けられる。新製品・新サービスが発表される例年の慣習を破る新しい試みだった。

永來:世界のトップレベルで活躍されている方々のプレゼンテーションに直接触れられる、いい機会だった。本当にいいものは、間接的に内容を聞くだけでなく、しっかりと自分の目で見ることが大切。学生たちにも、このようにハイレベルなものをできる限り身近に見せられる機会を、今後どのように実現していこうかと考えさせられた。

小山内:まだ開発中・実験中の取り組みを覗き見させてくれる、恒例の「Sneak Peeks」でも、普通の社員が5分程度のわずかな持ち時間のなかで、聴衆を惹きつける巧みなプレゼンテーションを見せた。文字通り「覗き見」の、Sneak Peeks自体では難しいかもしれないが、このようなプレゼンテーションをアーカイブ化すれば、実践的なビデオ教材に仕上がるのではないだろうか。特に豊富なリファレンスの紹介などは、実習授業にとても役立ちそうだと感じた。