Adobe Japan Education Vanguards (高等教育機関教員向けコミュニティ)

講師 大里 浩二(おおさと・こうじ)氏

Adobe® Creative Suite® 5の発表を記念し、Adobe CS5の魅力やデザイン教育のあり方を様々な角度から紹介する、Adobe Education Vanguards主催セッション。5月9日・23日に続いて、最終セッションとなる第3回目が、2010年6月6日(日)に開催されました。その様子をレポートします。

この日は「CS5 for 理工系」と題して、研究観察に役立つ画像処理のテクニックや、見る人を惹きつける研究発表資料作成のポイントが紹介されました。Adobe Creative Suiteと言えば、デザイン・美術系ジャンルで作品制作に活用されるソフトという印象が強いですが、そのポテンシャルはそこに止まりません。自由自在に画像を編集したり、スマートなレイアウトを手早く作成、プレゼンテーションに適したインタラクティブなコンテンツに仕上げるパワーは、研究発表の機会が多い理工系の方にも、存分に活用していただけるはずです。

講師を務めてくださったのは、デザイン事務所・株式会社THINKSNEOの代表取締役、大里浩二さん。大里さんは、CIや広告、エディトリアルなどを幅広く手がけるアートディレクターであり、大阪芸術大学の非常勤講師も務めています。さらに、Creative Suiteの誕生初期からデザイン実務でじっくり使い込み、多くの雑誌や著書でその良さやノウハウを紹介してきた、まさにCSのプロフェッショナルでもあります。その視点から、単に新機能の紹介にとどまらない実践的なCS5の使いこなし方を紹介していただきました。

講師の大里浩二さん。「CS5、特にInDesignは、ドキュメントの整形ツール(ワープロ)としてだけでなく、プレゼンテーションやWebでの資料公開にも使える、パワフルな情報発信ツールに進化した」と熱く語った

またこのセッション向けの画像には、オリンパス株式会社のご厚意を受け、多くの顕微鏡写真などが用意されました。理工系の方には、より臨場感を抱いていただけるプレゼンテーションになったことでしょう。

セッションの開始にあたっては、まずAdobe Bridge CS5が紹介されました。Bridgeは、CSに含まれるアプリケーションを縦横に行き来し、シームレスで効率のいい作業環境を提供してくれるブラウザーツール。図表や写真、文字など数多くのパーツを一つの資料にまとめる際にも威力を発揮する、CSのハブのようなソフトです。ここでは導入として、画像の様々なプレビュー表示や撮影情報などメタデータの閲覧、Webギャラリーへの書き出しなどの機能に簡単に触れ、セッション中は実際に他のアプリケーションと連携しながら、その使い勝手を紹介していくことが予告されました。

Adobe Photoshop® CS5で
「画像を観察する」

続いて、まずは発表資料の準備ということで、画像の解析に活用できるAdobe Photoshop CS5の登場です。最初は「画像を観察する」という観点から役立つ新機能が次々と紹介されました。ズームツールを選択してマウスボタンを押し続けると、画像がなめらかに拡大/縮小される「無段階拡大/縮小」機能はCS4で登場したものですが、CS5ではドラッグ動作によってより高速に、意図通りの拡大/縮小ができるようになっています。ここで大里さんから紹介された実践テクニックが、画像のどこか1箇所を観察したときの拡大率を、画像内の他の箇所にも素早く適用する方法です。

画面が望む拡大率になっているとき、「H」キーを押しながらマウスをクリックすると、画面は全体表示に変わります。このときマウスカーソルには先ほどまで拡大していたエリアを示す矩形が表れています。そこで「H」キーを押し続けながら、先ほどと同じ倍率で観察したい場所へカーソルを動かし、再度クリック。すると画面は、最初の拡大倍率へと変わるのです。これまでのバージョンでも、拡大倍率を数字で指定したり、拡大したまま画像をスクロールしていけば、もちろん同じ倍率で画像を観察することは可能です。しかしそれでは全体/部分の関係が捉えにくかったり、スクロールに時間がかかったりするため、作業の効率がいいとは言えません。Photoshopのこの機能は、例えば顕微鏡写真の細部を観察する際などに大いに役立つことでしょう。

Photoshopは、複数の画像を同時に開く際の操作性にもきめ細かな配慮がされている。同条件で比較観察したいときに便利だ

続いて紹介されたのは、今度は複数の画像を同時に比較・観察する際に役立つ機能です。Photoshoで複数の画像を開く際には、「ドキュメントレイアウト」メニューを用いると、各画像のウィンドウを意図通りの大きさ・配置で簡単に整列させることができます。さらにサブメニューにある「表示サイズと位置を一致」などのコマンドを選び、1つの画像を任意の位置・倍率に拡大すると、他の画像もそれに追随。またCS4から搭載されている「なめらかな画像の回転」の動きにも追随します。これらの機能を用いれば、簡単に複数の画像を同じ条件で比較できます。

また、一度に撮影できないような大きなエリアを、分割して撮影した画像が簡単に合成できる機能も紹介されました。複数の画像はまず、1つのファイル内にレイヤーとしてスタックする(重ねる)必要があります。ここでBridgeが活躍します。もちろん各画像をコピー&レイヤーにペーストしたり、Photoshopの「スクリプト」メニューから「ファイルをレイヤーとして読み込み」コマンドを使ってもいいのですが、それでは画像1点1点を処理する手間がかかります。Bridgeなら、1つのファイルにまとめたい画像をすべて選択し、「ツール」メニューの「Photoshop」から「ファイルをレイヤーとして読み込み」を選ぶと、一度で全画像がレイヤーになったファイルが作成できるのです。

複数の画像を、レイヤーとして1ファイルにまとめる際にはBridgeを使えば便利。セッションは、メニューの位置などが拡大表示できめ細かく説明され、使い慣れないユーザーにも分かりやすく進行した

用意ができたら、あとは「レイヤー」パネルですべてのレイヤーを選択し、「編集」メニューの「レイヤーの自動整列」を選ぶだけ。整列のオプションもありますが、大抵の場合はデフォルトの「自動整列」のままで、実に見事に合成画像が作り出されます。その後は、同じように自動整列した風景写真を例に、「レイヤーを自動合成」コマンドで画像の露出を合わせることも可能なことや、合成の際にかなりインテリジェントな処理が自動で行われている様子も紹介されました。

Photoshop CS5で
「画像を編集・解析する」

こうした「画像を観察する」のに役立つ機能に続いて紹介されたのが、「画像を解析する」のに役立つ機能です。まずは基本のおさらいとして、例えば被写体のターゲット部分をよりはっきり見せるために、「色調補正」のコマンドで画像を編集する方法が紹介されました。ここで少し注意があったのが、CS3以前から搭載されている「イメージ」メニューの「色調補正」と、CS4から搭載された「色調補正」パネルの機能は少し異なるということ。というのは、従来のメニューは元の画像を直接編集するため、編集後のファイルをセーブしてしまうと、元の状態に戻すことは二度とできません。しかしパネルから操作を行うと、自動的に「調整レイヤー」が作られるため、後からパラメータを変更することも補正内容をすべて破棄することも可能な、非破壊編集が可能となるのです。一次資料が重視される研究発表の場面では、元のデータを維持するこの手法が役に立つことでしょう。

会場では、このような「色調補正」パネルを用いた補正の例として、画像関連のプロが愛用する「トーンカーブ」や、直感的に使いやすい「明るさ・コントラスト」、画像の特性によっては大きな補正効果が得られる「チャンネルミキサー」などのコマンドを用いた操作が次々と披露されました。調整レイヤーの合成方法を変更したり、複数の調整レイヤーを使って補正を重ねたり、R, G, Bの各チャンネルに個別に補正を加えたり……。元々フォトレタッチソフトであるPhotoshopには、こうした画像補正のコマンドが実に豊富に用意されています。元画像の特性や研究の目的に応じて、最適な効果が得られるよう、ぜひトライしてコツを掴んでいただきたい機能です。

「色調補正」パネルから画像編集を行うことで、自動的に「調整レイヤー」が作られ、元画像に変更を加えない非破壊編集となる

Photoshopでもっとも一般的な補正コマンド「トーンカーブ」も、R,G,Bのチャンネルごとに用いるなど、様々な使いこなしがある。図は、左が元画像、右が編集後。会場では他にも多数のテクニックが披露された

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