Adobe Japan Education Vanguards (高等教育機関教員向けコミュニティ)

Education Vanguards Interview 白石 学(しらいし・まなぶ)

言葉を借りるのではなく、人間のイメージを源泉に
ブラッシュアップしていくデザイン

インタラクションデザインを専門として、デジタルコンテンツデザインやインターフェイスデザインを教える一方、自らも実験的なメディアアートを創作し続けている、武蔵野美術大学デザイン情報学科の専任講師、白石学先生(芸術工学博士)。白石先生は、方法論からもう一度考え直してみようと言える人材を育てるために、独特の方法論で授業を行っています。

執筆/須貝 弦

メンバーシップの登録はこちら

ブックマーク / 共有

Bookmark and Share

白石 学(しらいし・まなぶ)

武蔵野美術大学造形学部 デザイン情報学科 専任講師

1971年8月17日,岡山県生まれ。武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科卒業。同大学院基礎デザインコース修了(造形修士)。九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科博士後期課程修了(芸術工学博士)。韓国・釜山の東西大學校デジタルデザイン学部マルチメディアデザイン学科にて3年弱のあいだ助教授を務めた後、日本に帰国し現職。

この事例のPDFファイルをダウンロード

ラグビーから美術への「転身」

子供の頃から図画工作的なことは「好きだった」と話す、武蔵野美術大学デザイン情報学科の白石学先生。しかし、実際にデザインやアートの道に進むことを意識したのは高校生のときでした。

「美大に行きたいと思ったのは高校2年生のとき。美術の時間に、自画像から粘土で生首を作る(笑)彫刻の授業があったのですが、私が作った作品を見て、美術の先生が“美術に進みなさい”“美術部に入れ”と言うのです。でも私、実はラグビーの推薦で大学に進学できればとも考えていました。そこで、美術の先生にそのように話したら、ラグビー部の顧問にかけあってくれて、私は美術部に移ることになりました。美術の道で食べて行けるのかという素朴な疑問はあったのですが、仕事としてはデザインが良いのではないか、とは考えていました。」

デザインを仕事にするという将来像を描きつつ美大に進学した 白石先生、大学ではどんな研究をしていたのでしょうか。

「私は、色彩心理学に興味をもって研究していました。絵を描くことよりも、相手がどんな色を好むのか、デザインを手に取ったユーザーが、どのような観点から色を見ているのかを分析することで、実際に表現する手前の部分が重要だということに気づきました。」

色彩心理学を選んだ背景には、子どもの頃に親しんだミュージックビデオが関係しています。テレビ局に勤務していた父親が自宅に持ち帰ってきたミュージックビデオを見ながら「この音楽にこんな映像なのか、こんな色なのか、自分ならどんな色にするかな」といったことを考えていたと言います。

「すごく好きだったのが、エルビス・コステロ、デヴィット・ボウイ、デュラン・デュランなど。80年代まっさかりという感じですね。」

色彩からVRの研究へ

大学院まで進んで色彩の研究にどっぷりとはまった白石先生は、さらに産官学共同で行われた色彩の研究を手伝うかたちで、卒業後も色彩心理学者の千々岩英彰教授の下で3年間を過ごしました。

コンピューターに接続したマイクから入力された音声に反応し、炎が揺らぐという白石先生のインタラクション作品「The Sound on Fire」

「共同研究の中で、国や企業に対してプレゼンテーションをする機会があるわけですが、今まで先生方はOHPやスライドを用いていました。そこで、コンピューターでやれば、もっとスムーズにできるのにという想いから、先生方から素材をもらってはコンピューターでプレゼンテーションのデータをまとめるようになったのです。そして、これを見栄えよくしようと思ううちに、興味の対象が色彩からプレゼンテーションに移って行きました。」

しかし、色彩に関する研究を発表するためのプレゼンテーションデータを作っているときに立ちはだかったのが、コンピューターの中における色の扱いです。今ほど、カラーマネージメントが普及していない頃の話です。

「色に関するデータをコンピューターにまとめようとすると、モニターごとに色が違ったり、写真をデジタル化する際に勝手に色の補正が行われたりといったことがあって、何一つ正確なことを伝えることができなかったのです。コンピューター上でいかに人に対して色を伝えるか……ということを考えているとき、九州芸術工科大学(現・九州大学)の源田悦夫教授から、コンピューターの世界で色を見せる研究、バーチャルな世界で色を扱う研究をしてみないかと誘われ、博士課程として、九州芸術工科大学に入学しました。」

九州芸術工科大学では、色彩という枠にとどまらず「バーチャルリアリティ」の基礎研究に取り組みました。映像に合わせて椅子を動かすモーションライド装置が導入されており、それを活用して、バーチャルリアリティのジェットコースターを開発する研究に参加しました。

「効果的なコンテンツを作るために、乗っている人が最も興奮するポイントはどこか、ということを調べました。ふつうは急降下等のクライマックスに興奮を感じると思いがちですが、研究の結果、ゆっくり上っているところがもっとも恐怖心や興奮を感じるというデータが出てきました。時系列のあるコンテンツを作る際には、クライマックスを激しくするために努力するよりも、その前段階の部分で期待させるような興奮に注力したほうが良いのではないかと。そういったバーチャルリアリティにおける心理学を論文にまとめて、博士号を取りました。」

他のインタビューも読む

< Education Vanguards トップページに戻る