

学生を対象に、アドビ製品の活用方法を実践的に紹介するセミナー「Adobe Campus Day」が、2009年11月25日に女子美術大学相模原キャンパスで開かれました。
彫刻や絵画を専攻しているファイン・アート系の学生に、ポートフォリオをよりよい形で制作していただくことがメインテーマです。
作品撮影の方法やAdobe® InDesign®を使ったポートフォリオ編集の基礎をレクチャー。大学院進学や就職に直結する内容だけに、学生の皆さんも熱心に聞き入っていました。
女子美術大学では、これまで、アドビ製品ユーザーを対象にAdobe Campus Dayを開催してきました。今回は、あまりデジタルツールを利用したことのない「ファイン・アート系の学生を対象」としての開催となりました。
「洋画や日本画、彫刻などを学ぶ学生たちも、ポートフォリオが就職や進学、またプレゼンテーションの場に役立つと知っているものの、具体的にどのように作成したらよいのかわからない状況にあります。作品制作中心の毎日の中で、デジタルツールに触れる機会も少ないからでしょう。」と、話すのは同大学でデジタル支援を担当する坪谷彩子さんです。
そこで今回は、ポートフォリオを作る方法、特に作品撮影と画像の取扱いにポイントを置いての実施となりました。このような対象となる学生のニーズを反映した内容もAdobe Campus Dayの特徴です。
会場となった芸術学部の講義室。夕方からの開催にもかかわらず、多くの学生が集まりました。
デジタルカメラの種類や参考になる雑誌の紹介など、ていねいなレクチャーが今回の特徴。「自分はデジタルツールに弱い」と思っている学生にも安心してもらえました。(アドビ システムズ 宮岸 尉子)
セミナー前半は、作品の撮影方法とAdobe® BridgeやAdobe® Photoshop®で画像を整える方法を紹介しました。講師はアドビシステムズの宮岸尉子が担当し、コンパクトカメラとデジタル一眼レフの違いや、保存形式の違い、撮影場所の決め方や十分な光量を得るためのレフ板の作り方など、具体的にレクチャーしていきます。
「デジタル画像なら、撮った後でどんな加工でもできると考えがちですが、ピントのズレや構図など後から処理できないこともあります。作品の魅力を損なわないポートフォリオを作るためにも、条件を変えてどんどん撮影するようにしましょう。」
続いて撮影した画像の編集に移ります。Photoshopで作業を進めるには、画像管理ツールBridgeを使いこなせると便利です。Bridgeについては、画像を整理し分類する方法を紹介しました。
もちろんPhotoshopを使った修正テクニックもしっかりとデモンストレーション。色調補正やトリミング、パースやゆがみの調整などを例示していきます。撮影時の準備や画像管理がじゅうぶんに出来ていれば、Photoshopでの作業がとても効率的にできることを実感いただけました。
セミナー後半は、高度な編集機能を持つInDesignを使って、ポートフォリオを実際にどのように編集し、印刷物に仕上げていくのかを紹介しました。 まずベースになるフォーマットを決め、続いて画像とテキストを配置していきます。前半で紹介した画像管理ツールBridgeはInDesignとも連携しているため、画像配置が直感的に行えるのです。
レイアウトが完成したら出力準備です。印刷所に入稿するためのデータのまとめ方やPDFでの書き出し方法までを示しました。さらにFlashデータ化についてもご紹介。紙のポートフォリオだけでなく、デジタルポートフォリオの可能性も示しながら、90分のセミナーが終了しました。
立体アート学科の学生の生活は、制作、つまり手仕事が中心になりますから、大学内のPCルームに足を運ぶ機会は多くありません。ましてPhotoshopなどを使って画像を編集することも少ないですから、今回の内容は学生にとって分かりやすかったと思います。
もちろん、よいポートフォリオはよい作品があってのこと。極論すれば「本物を見てよければ何も言うことはない」わけです。だから学生には第一に制作のスキルを上げてほしいと願っています。ただし、自分の作品を上手にアピールしていくにはどうしたらいいか、ということも今から少しずつ考えていってほしいのです。その意味でも内容の濃いセミナーだったと思います。私自身もPhotoshopの使い方で知らなかったこともありましたから、さっそく自分の仕事にも活かしています。
立体アート学科の平戸貢児教授
デザイン学科の茅野義博教授
学生がポートフォリオを作るときにずっと気になっていたのは写真のクオリティでした。「えっ?これを出してしまうの?」というレベルのものが多いように感じました。これは学科にかかわらず学生全般に共通する部分ですが、「相手に伝える」ことを前提にした写真の撮り方からレクチャーしてもらえたのは、学生たちにとってプラスになるものと思います。
実は私も大学で教えるようになってからアドビ製品を使い始めました。実際に使っていくうちに、自分に必要な機能は何かが見えてくるようになってきたので、学生にもアプリケーションの便利さや機能に踊らされず「自分の表現にとってデジタルツールはどう使いこなせるか」を見極めていってほしいですね。そのためには専門分野にとらわれず、何にでも好奇心を持ってふれてみること、そういう姿勢が大切だと思います。
ポートフォリオ制作に必要な情報がぎゅっと凝縮された今回のセミナー。講師の宮岸は、画像の取扱いに関して、撮影の基本やデジタルカメラの仕組みについて、実物を用いながらゆっくり、わかりやすくレクチャーすることを心がけました。
セミナー後に行ったアンケートから学生達の感想を見てみましょう。
「ちょうど今、ポートフォリオを制作していて悩んでいるところだったので、参考になりました。」(工芸学科4年生)
「早い時期からクオリティの高いポートフォリオを作り、自分を高めたい。InDesignの使用方法が参考になりました。」(芸術学科1年生)
「PhotoshopなどのアプリケーションはPCに入っているけれど、使い方がわからなかった。ファイン・アート系の学科で、PCのスキルが低いと感じていたので学んで役立ちそうです。DM作成をしてみたい。」(絵画学科2年)
「冊子形式のものは今までIllustratorを使っていたので、これからはInDesignを使ってみたい。画像の処理などすでに知っていることでも再確認できたのでよかったです。」(デザイン学科4年生)
特に、2年生、3年生からは「就職活動を意識して」という声が多くあがっていました。
学生の状況を的確につかみとり、必要な情報を提供できた今回のセミナーは、アプリケーションの使い方を伝授するという枠をこえて、学生が将来の進路選択の際に必要なはじめの一歩を支援する良いチャンスにつながったのではないでしょうか。
芸術学部テクニカルマイスターで同大OGの坪谷彩子さん(左)を交えて。「デジタルツールが苦手」という美大生の気持ちにも共感できるといいます。