Education Vanguards Interview 「上平 崇仁先生」

情報教育の中に埋め込まれた経験のデザイン

今やデザインは日常生活のあらゆるシーンに入り込んでいます。情報系学部や工学部でデザイン教育が実施されているのもその現われです。大学の教育活動と並行してデザイナーとしても活躍している上平崇仁准教授は、「大学教育への関わり方も、デザイン実務者としてのスタンスを強く意識しています」と話します。例えば、人とシステムが関わり合う接面としてのユーザーインターフェイスのデザインの場合、システムを使う人間の姿をきちんと理解しないとデザインはできません。それをいかに学生に伝えるのか、情報教育に埋め込まれたデザインについて、上平准教授にお話しを伺いました。

インタビュー:佐原 勉(株式会社ユニゾン)

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上平 崇仁(かみひら・たかひと)

1972年鹿児島県阿久根市生まれ。1995年横浜国立大教育学部美術科卒業、1997年筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻修了。グラフィックデザイナー、東京工芸大学芸術学部助手を経て、2004年専修大学講師、2006年より現職。専門は情報デザイン、造形理論。人と情報の自然な対話のためのデザイン手法、思考プロセスを重視した情報メディア教育に関心を持つ。教育活動に力を注ぐ傍ら、学外とのコラボレーションとして様々なプロジェクトにデザイナーとして参加している。最近の活動 にNHKブランディングサイト「巡 meguru」(アートディレクション担当、日本放送協会、2007年)など。

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教育の場にこそ、デザインの力を活かす

私は大学の教育活動と平行して、時折グラフィックデザインやユーザーインターフェイスのデザイン実務に関わっています。大学教育への関わり方も、デザイン実務者としてのスタンスを強く意識しています。と言うと、大学のWebやポスターなどの宣伝活動を行っているように思われそうですが、そうではありません。例えば、何かの学習用教材をつくる場合を考えれば、それはビジュアル的な問題ではなく、その教材でいつ誰がどのように学ぶのかという状況と切り離せないこと、むしろそこでの関係性こそが本質であることがわかるはずです。人が学ぶというやりとりをいかに設計するか、関わる人のトータルな「経験」も重要なデザイン対象です。せっかく大学というフィールドの中にいるのですから、より豊かな学習活動を起こす手法や教材開発に注力しています。

そこでは、単純に快適さを追究してはいけません。植物も栄養や水を与えすぎれば生命力が弱るといいますが、人間も同様に生き物ですから能力を引き出すためには適度に厳しい条件が必要です。単純に「わかりやすく」伝えることや「楽しさ」を狙うことは時に逆効果になる危険もあります。また一方で、学生がやりたいことというのも、断片的な知識から何となく思ったことに過ぎないこともありますから、その先入観を外す機会はどこかにあるべきだと思います。それらも踏まえながら常に広い視野を持つように努めています。

大学で担当している内容は情報デザインですが、デザイナー育成が主眼ではありませんので、どちらかというと情報学の一環として捉えられます。

私自身はデザインを「計らい」だと考えています。設計にも計画にも入っている「計」の字を訓読みした言葉です。その時、ただ思いやりの気持ちだけではダメで、それをデザインの言語でいかに端的に記述するか、エレガントに表せるかがデザインの質なわけですが、そういった行為は何もデザイナーを名乗っていなければしてはいけないということはないはずです。今や情報を扱う以上、必ずデザインは必要です。総表現社会に生きている以上、誰もがデザインマインドを持っておくべきだと思いますし、講義の中でもそういったメッセージを込めています。

現在、デザイン教育が情報系学部や工学部で取り入れられることが増えてきましたが、それだけ需要が高まっていることの現れなのでしょう。しかし、学習者の前提能力が多様化していますから、どこもまだ模索段階だと思います。かつては造形表現の徹底的なトレーニングだけがデザインを学ぶ入り口でしたが、違う方法もあるのかもしれないと、フィールドワークを重ねながらそれを探しています。

Project Based Learning ネットワーク情報学部では、3年生の主要コア科目として従来のゼミナールの代わりに、学生主体のプロジェクト演習を取り入れています。最近は全国でもこのようなProject Based Learning(PBL)が増えてきましたが、専修大学の場合、学部全体でシステム開発から情報戦略、そしてデザインまで、多様なバックグラウンドを持った学生や教員同士でチームをつくって取り組む形式です。

教育の手間暇はゼミよりもはるかにかかりますが、異文化交流が起こることで、学科毎の教育組織では決して生まれないような独特の文化が築かれつつあります。特に実験的な試みとして、我々の学部ではプロジェクトの最初の編成時に、企業や教員で予め準備したテーマを選ばせるだけでなく、学生の方が自らテーマを立ち上げ指導教員を指名することもできる制度をつくりました。2007年度に私は、「オンラインショッピングのためのインターフェイスを開発したい」という学生らに指名され、指導を引き受けました。

6人一組、2チームの学生が集まっていましたが、もちろん実際にショップを開いてお金を儲けたいわけではなく、最初は漠然とWeb上で商品を組み合わせたりして、シミュレーションするようなものをつくりたいとイメージしていたようです。ただ、そういうことはみんな真っ先に考えます。そこで一旦リセットさせ、実際の買い物の様子を調べるために休日にみんなで街に出ました。数名でグループをつくってあちこちの店を回り、買い物客がお店の中でどんな行動をしているか、どんな時に楽しそうにしているか丁寧に目を凝らして観察したのです。

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