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Education Vanguards Interview 角 康之(すみ・やすゆき)

「作ってみて、使ってもらわなければ始まらない」
体験を基にしたインタラクション支援

コンピュータが生活に浸透する現代社会。それらは近い将来さらにネットワーク化が進められ、人の生活空間を包み込むようになるでしょう。京都大学の情報学研究科で、人と人、人とコンピュータ相互の働きかけ=インタラクションの支援とデザインを研究する角康之先生は、「情報学は工学だけに関係するものではありません。社会をどう読みどんな影響を与えるか、どう使われるのかというデザイン的なセンスも重要」と語ります。このような時代において、人やコンピュータのコミュニケーションをデザインするためには、どんな視点が大切なのでしょうか。

執筆/坂本綾(有限会社アリカ)

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角 康之(すみ・やすゆき)

京都大学 情報学研究科 知能情報学専攻 准教授

略歴と主な研究内容
1990年 早稲田大学理工学部電子通信学科卒業。
1995年 東京大学工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。大学院では人工知能の研究室に所属し、発想支援システムや、ソフトウェアの要求モデル構築支援の研究に従事。
1995年に国際電気通信基礎技術研究所(ATR)に入所し、議論支援システム、展示見学ガイドシステム、コミュニティ支援システムの研究開発に従事。
2003年から京都大学情報学研究科助教授(2007年から准教授)。現在の主な研究テーマは、インタラクションの理解と支援、および、体験メディア。

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古地図から「人が認識した世界」が見える

緑豊かな吉田山のふもとに広がる、京都大学吉田キャンパス。その伝統ある本部構内の一角に、歴史の重みを感じさせる研究棟が建っています。目指す角先生の研究室はその中。ドアを開けた途端、壁一面を埋め尽くすように並べられた本たちが出迎えてくれました。

角先生の研究室がある工学部研究棟は、時計台などがある京都大学本部構内(吉田キャンパス)にある。同構内には文学部や法学部、教育学部などの文系学部もあり、古き良き総合大学の空気が健在だ

「僕はご覧の通り本が好きで、物欲はあまり無いんだけれど(笑)本だけは少し集めているんです。たまたま立ち寄った古書店でおもしろい本を見つけて喜んだり……。なかでも、芸術、建築や都市、空間デザインに関するものや、地図・絵巻の類に興味を持っています。特に気になるのは古い地図。古地図には、当時の生活や意識が反映されていると思うんです。

例えば人に駅から自分の家までの道筋を案内するとき、距離的に正確な図を書くのではなく、ランドマークを入れたりして自分の解釈で書きますよね。つまり地図には、世界をどう認識・解釈しているかを反映する、認知的な面があるわけです。

現代は、例えば宇宙衛星を使って上から見れば、地理的に正しい地図が描けます。それで『古い地図なんていいかげんなものだ』と思いがちですが、その場所の居心地や、そこで生活している人の感覚をどちらがうまく表しているかというと、意外と古地図のほうかもしれません。いま『グローバリゼーション』とか、『表現を標準化すれば、世界は均一なものとして繋がり合える』といった考えが流行していますが、僕はそれはちょっとおかしいんじゃないかと思っています。そうではなくて、ローカルな認識をコラージュ状にくっつけ合うことで、もっと豊かな世界観が生まれるのではないかと」

個人の視点を記録し、コラージュする

「認知」や「ローカルな視点」は、先生が手がけた一連のプロジェクトのキーワードでもあります。その中でもまさに「コラージュ」が中心となるような、展示見学のガイドシステムを作成したときのことについて教えていただきました。

「研究発表会に参加した人の体験をそれぞれの視点で記録して、それを後で全員で共有したり、追体験したりできるようなツールを作ったことがあります。ポイントは、展示会の空間を記録する方法。据え置き型のカメラで撮影するのに加え、来場者と展示者に小さなカメラとマイク、そして位置を把握するためのLEDタグを身に付けてもらったんです。それによって、それぞれの人が目にした『一人称の映像』を個別に記録したわけです。その個別の映像を使い、その人の行動日記(ビデオサマリ)を自動生成しました。それだけではつまらないから、据え置き型カメラで撮影した映像や他の人が撮影した映像にその人が写っていれば、それもその人 の日記に取り込むようなシステムにしました。

ここでさらに、全員の『一人称の映像』をコラージュ状に空間のなかで再配置してみるということを、思考実験的な手作業ではあるのですが、行ってみたんです。そうすると、情報空間にメリハリが出てくる様子がよくわかる。例えば展示物の周辺は、あっちからもこっちからも見ている映像が得られるので、すごくリッチな空間が立ち上がります。その一方で、部屋の片隅を見ている人なんていないから、そのあたりの情報空間はスカスカです」

全方位カメラで撮影した「全体の記録」よりむしろ、一人一人の「個人の記録」を繋ぎ合わせることで、その場にいた人が共有していた意味や空気がはっきり見えてくるというのは、とても刺激的な試みです。実は、この発想の源にはアート作品の影響があったそうです。

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