武山先生は「今の街は効率的に作られすぎているんです」と話します。街の魅力を高めることは、単に「最適化」するだけではないのだ、と。
「例えば代替現実ゲーミングでは、日常生活の中で“あたりまえ”と化しているところに、何か違う発見、今までに無い想像力が入ってくることで、これからの豊かな暮らしが見えてくるんです。「日常生活を惰性にしない」ということですね。街がコンピューターだとすれば、そこで動かすソフトウェアを変えてあげることによって、街の持っている機能を変えたり高めたりすることができる。外見を変えなくても、街にもっと多義性を持たせることができるでしょう。それも、誰か特定の都市計画者がやるのではなく、いろいろな人が参画できるようになってくると面白いでしょうね。」
こうやってお話を伺っていると、なんだか経済学部という感じがしません。そのことを武山先生に正直に告げると、笑ってこう話します。
「例えば地理と経済がベースだからといって、すべてを地域経済に持っていこうということは考えていません。学問やカテゴリーということに捕われないで、興味に忠実にやることを最優先にしています。人は○ ○ 分野の先生として理解しようとしますから、学生にとっても最初はわかりにくいみたいですが(笑)」
経済学部ではありますが、武山先生自身が言うように教科書的な経済学に縛られること無く、現実の経済活動に溶け込みながら自由に飛び回っているという印象を受けます。
経済学部の学生も表現欲求は高い
先にも触れたように、ゼミのプロジェクトでは、サービスを企画立案したり、デバイスのプロトタイプを制作したりといった作業が発生します。「携帯電話やパソコン、そして専用デバイスにしても、プロトタイプを作ったり画面遷移を考えたりする際には、ビジュアル化したほうがわかりやすい。だから、表現欲求の高い学生は多いです」と武山先生は話します。
「そういった表現のスキルをどうやって身につけるのかは難しい問題ですが、基本的には、プロジェクトの中で必要に応じて、学生たちに自主的に学んでもらっています。ゼミの中でよく行われているのは、例えばFlashの入門講座とかでしょうか。学生の中に詳しい者がいれば、その学生が手を挙げて勉強会を行ったり、どんな本が役に立つかといった情報を共有したりしていますね。」
研究室の書棚には幅広い分野の書籍が並ぶ。「学生たちに貸している本が多い」と武山先生は語る
しかし一方で、武山先生はこうも話します。
「もっと、プロトタイピングが簡単にできるようなツールが、いろいろな人に開かれると良いと思います。プログラミング等ができる人材を中に持つということも考えられますが、例えば企業と組んでやっていますけど、工学系の学生と組むということはまだできていないので、そこができるようになると、また変わってくるでしょうね。」
武山先生の話を受けて、あるゼミ生は話します。
「経済学部にいると、(表現のスキルやアプリケーションの知識を)身につけたいと思っても、なかなか機会がありません。PhotoshopやFlashを覚えたいという願望はあるけれど、詳しい友達がいないとなかなか覚えにくいというのはあります。YouTubeやニコニコ動画のような、ユーザーが作る側に回れる文化に慣れ親しんでいるので、自分でも何か作りたいという気持ちはあるのですが。」(学生)
その「願望」をエネルギーに、学生自身に乗り越えてもらう。それが、武山先生のやり方だとも言えるでしょう。


