ゼミを組織して学生たちを「のせて」いく
学生の自主性に任されるのは、勉強会だけではありません。企業との研究プロジェクトでも、その進行は基本的に学生に任されています。ゼミの主役は、あくまでも学生なのです。では、武山先生が学生たちに提供するものは、何でしょうか。
「環境と動機付けですね。あと、企業とやっていますから、企業と学生両方の関心、研究とか学びという関心と企業のビジネスの関心をつなげていくことが必要で、そこは学生には難しいですから、私が責任を持ってやらなくてはいけないと思っています。どこに研究目的の主眼をおくかは、すり合わせが必要です。企業がどれくらいビジネスへの役立ちを期待しているのか、あるいは、すぐに役に立たなくてもいいからアイディアを期待しているのか……そのあたりを読み取ってすり合わせる必要があります。また、学生の力を引き出すためには、研究の方向性を、それぞれの学生がもともと持っている興味や関心につないであげることも大切です。」
ゼミでは常に複数のプロジェクトが動いています。毎週1回ゼミが開催され、学生による発表が必ず行われています。そこで「どうやって自分の考えをかたちにするか、どうやって論理的に整理するのか」(武山先生)を、徹底的に鍛えるのです。また、学生同士で別のプロジェクトについてコメントし合うこともあります。複数のプロジェクトが同時に走ることで、学生同士が刺激を受けるというわけです。こういったゼミの進め方については、「スタンフォード大のDスクールをある程度は意識しています。もちろん、こういう研究室に適した調査やアイディアを具体化する方法とは何かといったことは、いつも考えて試行錯誤していますが」と武山先生は話します。
ところで、ゼミの体制を作る「コツ」はあるのでしょうか。武山先生は「良い学生を集めることと、学生にできることは学生に任せること。学生主体の研究室ということを謳っています」と話します。入ゼミの案内に必要な資料作成、告知、説明会の実施なども学生に任せています。
入ゼミの難易度も高いようです。前回の入ゼミ選考試験の課題は「楽しさ」。今までの中でもっとも楽しいと思った仕掛けを紹介し、なぜ楽しいのかを分析し、それを他の分野に応用するとどのようなモノが作れるのか——を、学生に考えさせるというものでした。入ゼミの倍率は、経済学部の中では常に1・2を争っており、ゼミ外の学生からは「楽しいけれど大変」「モチベーションが高くやる気のある人たちが集まっている」というイメージで見られているようだと武山先生。
武山政直先生と、インタビューに同席してくださったゼミの学生たち
モチベーションを維持するために、ゼミ生専用のSNSも活用されています。武山先生が書く日記から、学生たちが刺激を受けることもあるそうです。ある学生は「先生がネットワーキングのコアになっている」と言います。そして武山先生自身、そういった組織作りを「楽しんでいますし、そこに学生に参加してもらっています」と話します。「研究の成果を出すと同時に、研究室を良いものにすることも学生たちに考えてもらい、それ自体を楽しんでもらっているのです」と。
最後に、武山先生が学生たちに「どんな人材になってほしい」と思っているのかを伺いました。
「世の中を変えていく人になってほしいですね。組織の中に入っていくと、組織の中で与えられたアウトプットを出していくことが求められます。しかし、日本の組織のあり方が、このままうまくいくかどうか。これからの、組織や経済のしくみが変わっていく時代において、リーダーシップをとって欲しいです。こっちに行こう、と言える人材になってほしい。もっと楽しくなる、豊かになる——というものを作ってほしい。そのためには、新しいものを考えることを楽しんでできるか、可能だと思えるかどうか。可能性がイメージできて、やろうと思えば実現できるんだという想いを持つこと、実現する方法がわかることがとても重要だと思います。」


