感性デザインをベースとして小児医療のための
「チャイルドライフデザイン」に取り組む
東京都八王子市の拓殖大学・工業デザイン学科において「感性デザイン」について研究・教育を行なっているのが、岡崎 章教授です。今、岡崎先生が注力しているのが、小児医療と関わる「チャイルドライフデザイン」というもの。デザインの力を社会に活かすこの取り組みについて、お話を伺いました。
執筆/須貝 弦
岡崎 章(おかざき・あきら)
拓殖大学 工学部 工業デザイン学科 感性デザイン研究室 教授
東北芸術工科大学 デザイン工学部 生産デザイン学科 助手、筑波大学 感性評価構造モデル構築特別プロジェクト専従研究員、筑波大学 芸術学系 専任講師、拓殖大学 工学部 工業デザイン学科 感性デザイン研究室 准教授を経て、2008年より現職。武蔵野美術大学 デザイン情報学部 非常勤講師、慶應義塾大学 理工学部 非常勤講師も務める。
博士(感性科学)[Doctor of philosophy in Kansei science]
(筑波大学)
「デザインにおける感性の働きに関する研究」
The function of Kansei in Design Process
デザイン学修士(筑波大学)
「製品に於ける“わかりやすさ”についてのユーザ・インタフェースの設計に関する研究」
感性デザインを小児医療に活用する
拓殖大学・工学部・工業デザイン学科には、「感性情報デザイン」「生活デザイン」「デザインシステム」「コミュニケーションデザイン」という4つの専門分野が存在します。その中で感性情報デザイン分野を担当されているのが、今回お話を伺う岡崎 章先生です。
感性情報デザインとは何か、その詳細は同学部のWebサイトに譲りますが、デザインを行なうためには、人間の感性を知ることが重要であることは言うまでもありません。岡崎先生の特徴は、感性情報デザインやインターフェイスデザイン論についての演習の際、「チャイルドライフデザイン」というものを取り上げている点にあります。学生たちは、デザイン課題のひとつとして小児医療に関わることによって、デザインの力でできること、やるべきこと、そして問題解決への向き合い方を学んでいます。
チャイルドライフデザインとは、岡崎先生が提唱する新しい考え方です。先生のWebサイトによれば『子どもの入院生活のすべてに渡り、大人の知り得ぬ恐怖心や自責の念から解放し、治癒効果を高めるためのデザイン』とあります。このチャイルドライフデザインを推し進めるには、子どもや親の感性と向き合うことが必然だったというわけです。
一般手術・骨髄穿刺用プレパレーションツール「Smile」
「指導困難校」の先生から大学教員へ
岡崎先生が感性デザイン、そしてチャイルドライフデザインというテーマに行き着くまでには、異色の道のりがありました。高校生の頃からデザインに興味を持ち始めたという岡崎先生は、岡山大学に進学。「岡山だし、やるなら備前焼かなと思って、ずっと陶芸のコースも併行して履修しました」と、岡崎先生は話します。そこで目指したのは、教員への道。しかし、素直に美術教員を目指したわけではありませんでした。最終的に、美術・工芸・数学という3つの免許を取ったのです。
「3つの免許を持っていたので、幸いにして高校の先生として採用されたんです。しかし、赴任したのは広島県下で“指導困難校”と言われた工業高校でした。どんなところか、想像がつきますか(笑)そこで6年間先生をやっていたのですが、さすがにちょっとこれは違うな……と思い始めました。その頃、大学の恩師と椅子のデザインなどをやっていたのですが、あるとき“デザイナーでもいけるんじゃないか”と思い、雑誌で見かけたデザイナーの求人に応募したところ、最終選考に残ってしまいました。」



