Education Vanguards Interview 岡崎章 先生 拓殖大学 工学部 工業デザイン学科 感性デザイン研究室 教授

学生の興味とどう関連づけるかが難しい

ツールの研究・開発は、教育という面から見ると“現場と直結した教材”と言えます。インターフェイスデザインの演習や、感性デザイン研究室のゼミを通じて、この課題に取り組んでいます。

「インターフェイスデザインの演習においては、小児医療の現場にいらっしゃる看護師さんを特別講師として招き、その看護師さんに対して学生からさまざまなプレゼンテーションを行ないます。それに対して、看護師さんから“面白いね”とか“それは現場では使えない”といった評価をしてもらうのです。」

このようなやり取りを通じ、デザインに対する考え方を養っていきます。そして感性を定量化し、その結果を反映させてデザインをブラッシュアップしていくのです。

しかし、難しい面もあります。学生の興味とどう結びつけるかという問題です。

「デザインは世のため人のためと言いますが、それは医療でも変わりはしません。ただし小児医療というのは、デザインとしてはやはり特殊ですし、今までなかった分野です。学生にしてみれば、建築がやりたい、ポスターを作りたい、プロダクトに興味がある……人それぞれ、いろいろやりたいことがあるわけです。いかにして学生の興味と結びつけるか、興味を引き出してあげるかが難しいと感じています。例えばプロダクトがやりたい学生に“車いすのデザインをしなさい”といってもピンとこないのですが“ムーバーのデザイン”と言い換えることで、学生が発想の枠を広げて、積極的にアイディアを出せるようになります。」

成果は次の世代に手渡す

岡崎先生が学生たちを見て感じていることが、ひとつあります。岡崎先生は「卒業制作を見ていて思うのは、毎年進歩していないということ。いつも同じレベルなのです」と言うのです。

岡崎先生のゼミでは、一度作ったものを、現場の要望や評価などをもとにして、次年度にさらなるバージョンアップを加えていくことがあります。卒業制作に関しても、すでにあるものをよりブラッシュアップしていくことがあっても良いのではないか、というのです。

岡崎先生がおっしゃっていることは、決して“次の世代の人は、前の世代の成果を引き継がなくてはいけない”という意味ではありません。むしろ、今の世代が次の世代に何を手渡せるか”を問うていると言えるでしょう。

このことは、卒業制作に限らず“研究成果”というものに対する岡崎先生の考えとも繋がってきます。

誰でも使えるようになればレベルが上がる

岡崎先生は「私は成果を人に全部あげてしまうんです」と言います。出来上がったツールなども、どんどん公開して、ときには積極的に(表現は悪いですが)送りつけることもあります。使ってほしい、ブラッシュアップしてほしい、そして広がってほしいという想いを、岡崎先生は抱いているのです。

光を発する「万華鏡」。この万華鏡で注意を逸らすことによってストレスホルモンである血中コルチゾール値を低くし、疼痛を和らげることができる

その一方で岡崎先生は「とはいえ、現場の看護師は自分たちでツールを作りたいと思っているんです。子どもたちのために作りたいという気持ちが、とても強いですから」とも話します。

「そこで私たちが、看護師さん等のために“ツールをデザインするための仕組み”を作ってあげることで、誰でもデザインされたツールを作ることができるようになれば、デザインというものが一気に広がります。」

岡崎先生のお話には、ときおり「誰でも使えるツールにする」であるとか「誰でも使えるようになることで、レベルが高まっていく」という言葉が出てきます。例えば、デザイン教育とは無縁だった看護師でも、ツールを使うことで優れたプレパレーションのためのインターフェイスが作れるようになれば、より多くの現場で質の高いプレパレーションが実現します。

「チャイルドライフデザインという分野には、企業も参入してくるでしょうし、他大学からも提案が出てくるでしょう。それはそれで、面白いことだと思います。結果としてレベルが上がり、いいものができるはずです。」

チャイルドライフデザインは、確かに特殊な分野です。しかし、間違いなく重要で緊急性の高い課題を捉えたもので、学生の学びとしても、今後の活動に生きる大切な経験を提供してくれることでしょう。チャイルドライフデザインを通じて、社会にどんな貢献ができるのか。岡崎先生の取り組みはこれからも続きます。

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