佐藤和彦 先生 日本工学院八王子専門学校 ITカレッジ ITスペシャリスト科、情報学科、パソコン・ネットワーク科 科長

情報デザインの手法を活かし、
人間重視の設計ができるSEを育てる

日本工学院八王子専門学校のITカレッジ・ITスペシャリスト科では、SEを育てる教育の一環として、情報デザインの要素を取り入れています。そのリーダーシップをとるのが、科長の佐藤和彦先生。情報処理技術者試験への合格が「目的」になっている情報系専門学校が多い中、人間重視の設計ができる人材を輩出できるようにと、日々奮闘しています。

執筆/須貝 弦

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佐藤 和彦(さとう・かずひこ)

日本工学院八王子専門学校 ITカレッジ
ITスペシャリスト科、情報学科、パソコン・ネットワーク科 科長

富士通系のシステム開発会社でSEとして活躍の後、専門学校の教員へと転身。元々は人前で話すのが苦手で、コンピューター相手の仕事をと思いSEになるも、SEという職種におけるコミュニケーション能力の大切さに気づかされる。現在では管理職として、情報処理教育に情報デザインの手法を取り入れたカリキュラムの作成のほか、教育担当として外部組織と連携したプロジェクト学習のコーディネートなど幅広い職務をこなす。

インターフェイスがおろそかにされてきた過去

専門学校の教員として教壇に立つほか、日本工学院八王子専門学校のITカレッジ・情報学科およびITスペシャリスト科の科長として、カリキュラム作成にも携わる佐藤和彦先生。現在の仕事に就かれる前は、大手ベンダーでSEとしてご活躍されていました。その経験を踏まえ、佐藤先生は「システム開発の現場では、インターフェイスがおろそかにされてきた」と語ります。その現状を変えるには、新しい人材が必要だと佐藤先生は考えました。

「SEの中には“インターフェイスにこだわってもしかたがない”という考えがありました。インターフェイスなんてどうでもいいとすら考えられていたのです。その結果、企業の中で使われるシステムなどは、時としてとても使いにくいものになってしまいました。それを使ってもらうためにどうするかというと、開発側はユーザーに対して“慣れてください”と言うわけです。もしくは、操作教育をすることが前提でした。そして、今でもこの“ノリ”の人が非常に多い。ここをなんとかしたいと思いました。」

誰もがコンピューターを使い、ハンディデバイスを持ち、誰に教えられるわけでもなくWebにアクセスしたり、アプリケーションを立ち上げるのが当たり前の現代。「20年前とはテクノロジーが違います。SEの発想が20年前のままではいけない」と佐藤先生は話します。

「昔の汎用機は、ディスプレイで表現できる領域が縦に24行、横に80バイトでした。次の画面に遷移するとき、画面をスクロールさせるのはプログラム上大変なことですし、画面もモノクロでした。そのような制限があったときは、使いにくいシステムでもしかたがなかった。しかし今ではGUIが使えますし、例えばウインドウを表示する制御のためにプログラムを書く必要もありません。以前とはインフラもツールも変わっているのに、システム設計をするSEの発想が当時をひきずっているのです。」

発表し評価し合うことでアイディアが磨かれる

「教育しなくてもいい」システムを作るために

そのような旧態依然としたシステム設計の発想を変えていくために、佐藤先生はどんなことをされているのでしょうか。

「以前はウォーターフォール型の開発が主流でしたが、今ではプロトタイピングの手法を用いた開発が盛んに行なわれるようにはなってきました。しかしながら、プロトタイピングの手法やワークフローの中でのさまざまな作業の位置づけは、まだ定まってないと感じています。また、教育の中で、インターフェイスの設計・テストについて教える機会があまりありません。そこで、情報デザインの方々がやられているペーパープロトタイピングや、実際のものを使ったプロトタイピング、ヒューリスティック法によるユーザビリティのチェック、プロトコル分析といった手法をシステム設計に取り込み、さらに人間中心設計という考えを取り入れた教育を行おうと、取り組みを始めたところです。」

システム開発に情報デザインの手法を取り入れ、インターフェイスを重視した設計を行うことで、開発する側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。佐藤先生は次のように説明します。

「私が情報デザインを学びはじめたころ、ある方からこんなことを言われたのです。“操作を教えなくてもいいシステムを作ることができれば、教育のコストはなくなりますよね”と。つまり、インターフェイスをしっかりと設計し、誰でも使えるものにすれば、新しいシステムを導入するときに使い方を教えるコストが削減できます。そのシステムを使用する人が新しく入ったとき、入れ替わったときなどに引き継ぎをするコストもなくなるのです。ユーザーインターフェイスに多少お金をかけても“その後がずっと良くなるはずだ”と言うわけです。私もどちらかと言えば昔の人間なのですが、そう言われてみて納得したのです。」

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